八王子と鳥公園の一年目

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「ヨブ呼んでるよ -Hey God, Job’s calling you!-」 の詳細情報が公開になりました。
画像をクリックすると、詳細情報に飛びます。(外部リンク)

 『ヨブ呼んでるよ』は、「義人の苦難」をテーマにした旧約聖書『ヨブ記』を現代日本に再解釈して描いた鳥公園の代表作(2017年初演/第62回岸田國士戯曲賞最終候補作品)。初演では、現代社会の価値基準によって一方的に量られてしまう存在と、その非常な理不尽と苦難を通し、全ての存在が「ただ存在すること」それ自体の価値を問いかけました。

 今回のリクリエイションでは、英題「Hey God, Job’s calling you!」を添え作品タイトルを更新。劇作 西尾佳織は戯曲のリライトを通して、個別の存在が発する「言葉なき声」を掬い上げます。

 また、2018年「鳥公園のアタマの中展」でのリーディング上演を経て演出にあたる三浦雨林は、『ヨブ記』を2023年の視座から多角的に解釈し、本作を舞台上へ再構成します。生演奏による音楽、現代画家と舞台美術家のコラボレーションも取り入れ、ジャンル横断的な演出で現代の受難を描き出します。

『ヨブ記』……旧約聖書に収められている書物。神への信仰篤く恵まれた環境で何不自由なく暮らしていた義人ヨブが、ある日突然まったく謂れのない受難に遭って神に問いかける物語。古より人間社会の中に存在していた神の裁きと苦難に関する問題に焦点が当てられている。

主催者メッセージ

八王子は江戸時代より宿場町として、明治には織物産業で栄えた街、また関東平野の西端の高尾山の麓に位置する歴史と自然のある街、さらに遡れば縄文時代より今日まで、東西南北の交易の交叉点としても多くの人々が出会った場所でもあります。

日常を送る市民にとっては、八王子での生活は「居」場所ですが、訪れたアーティストにとっては「異」場所。アーティストが暫く意識を滞在させ、身体で体験し、感じとった「新鮮さ」「違和感」「思考の糧」を人生の旅の1頁として演劇に昇華し、市民にフィードバックします。アーティストの生き様は他人の本、街を映す鏡となり、またある時はフィルターとなって皆の未来を映します。

2~3年という比較的ゆったりとしたスパンで、財団はアーティストの活動(ワークショップ・イベント・制作・上演等)を支援し、市民との接点・交流の機会を創ります。アーティストの上り階段の踊り場のように、或いはその旅路の束の間の宿り木のように、八王子が在ることを願い、そうした場づくり・関係づくりを始めます。

10年、20年と続いていく企画を目指し、まずは劇作家/演出家の西尾佳織さんが主宰を務める「鳥公園」と一緒に2~3年を過ごしてみることにしました。

1年目となる令和4年度は、『ヨブ呼んでるよ』の公演部分の制作を「合同会社syuz’gen」が担当し、質の高い作品の上演を目指します。そして八王子を拠点に活動する「演劇ネットワークぱちぱち」が、ワークショップ等を通して鳥公園、観客、八王子の街との出会いを演出します。

—プロデューサー 米倉楽(公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団 芸術文化担当部長兼芸術文化振興課長)

アーティスト メッセージ

八王子と2年か3年、一緒に活動することになりました。2~3年というそれなりに長い時間、一つのまちに軸足を置いて安定して活動できるのは、大変ありがたい話です。(ちなみに2年か3年というのは、やり始めてみてお互いに必要だねとなったら3年にしましょう、とにかく動き出してみないと何も分からないから、というやわらかさです。)

アーティスト・イン・レジデンスといっても、わたしたちが創作するときに常に八王子に腰を落ち着けて、八王子「で」つくるという意味では必ずしもなく、八王子「と」つくるんだろうと思っています。atではなくwithというか。

もちろんたびたび通って、時にはまとまった期間滞在したりもするかもしれません(したいです)。が、おそらく八王子というまちは、わたしの生活と地続きの場所にある。移住してその地に根ざさなくても付き合える距離にあり、アートによる新たな町おこしが強く期待されるような産業のありようをしているわけでもない、生活のまち。それでもそこに演劇の存在できる位置があるはずで、それを探るとき、わたしたちも自分の創作を生きることとの連続性の中で捉えられるだろうと期待しています。

新作をどんどんつくり続けることで、アーティストとしてのキャリアを積み上げるような活動の仕方にくたびれて、つくり方自体をつくり直そうと思ったのが2019年でした(鳥公園 新体制についてのステートメント)。どうすれば活動のために活動するような状態から抜け出して、創作を深め、作品とアーティストが(そしてそれに伴って社会が)成熟していけるのか? この問いを、八王子のまちと人と出会いながら、具体的な手触りとして実践していく時間にしたいと思います。

1年目は、旧約聖書「ヨブ記」を現代日本に翻案した『ヨブ呼んでるよ』のリクリエイション版を三浦雨林演出で。創作を始める手前の勉強会も、ワークショップとして一般に公開します。また、鳥公園が初めて公演を行う都市で開催してきた「鳥公園のジコショウカイ展」と、2年目に向けて、蜂巣もも演出の『昼の街を歩く』チームによる八王子滞在&ワークショップも予定しています。

上演だけでなく、その背景や水面下に流れている思想まで、是非のぞいてみてください。

—鳥公園主宰 西尾佳織

令和4年度 活動予定

2022年5月 ワークショップ 終了しました。
「ヨブ呼んでるよ -Hey God, Job’s calling you!-」関連ワークショップ
A-「旧約聖書『ヨブ記』を一緒に読む」
B-「戯曲『ヨブ呼んでるよ』におけるセックスワーカーの表象について考える」

2022年秋 ワークショップ 終了しました。
「昼の街を歩く」八王子滞在&ワークショップ

2023年2月 イベント
鳥公園のジコショウカイ展 in 八王子

2023年3月 公演
「ヨブ呼んでるよ -Hey God, Job’s calling you!-」
演出:三浦雨林 作:西尾佳織
会場:いちょうホール(小ホール)

〇日程
2023年 3月17日(金) 13:00開演、18:00開演
2023年 3月18日(土) 13:00開演、18:00開演
2023年 3月19日(日) 13:00開演


アーティスト紹介

鳥公園

作・演出の西尾佳織が2007年7月に結成。
「正しさ」から外れながらも確かに存在するものたちに、少しトボケた角度から、柔らかな光を当てようと試みている。「存在してしまっていること」にどこまでも付き合おうとする演出が特徴。
2020年より、和田ながら(したため)、蜂巣もも(グループ・野原)、三浦雨林(隣屋)の3人の演出家をアソシエイトアーティストに迎え、西尾は劇作と主宰業を担う新体制に移行。

HP:https://www.bird-park.com/home

〇近年の活動

2017年3月 「ヨブ呼んでるよ」@アトリエ劇研(京都)、こまばアゴラ劇場(東京)
2017年7月 「すがれる」2012/2017@アトリエ劇研(京都)、こまばアゴラ劇場(東京)
2018年2月 「鳥公園のアタマの中展」@東京芸術劇場 アトリエイースト
2019年3月 「鳥公園のアタマの中展2」@東京芸術劇場 アトリエイースト
2019年11月「終わりにする、一人と一人が丘」@東京芸術劇場 シアターイースト
2020年4月 3名のアソシエイトアーティストを迎えて新体制始動
2020年9月 「乳水」三浦雨林演出@ストレンジシード静岡2020
2021年4〜5月 「私の知らない、あなたの声」和田ながら演出@THEATRE E9 KYOTO、ストレンジシード静岡2021
2022年2〜3月 「昼の街を歩く」蜂巣もも演出@PARA

©引地信彦

鳥公園主宰
西尾佳織 Kaori NISHIO

1985年東京生まれ。劇作家、演出家。幼少期をマレーシアで過ごす。
東京大学にて寺山修司を、東京藝術大学大学院にて太田省吾を研究。2007年に鳥公園を結成以降、全作品の脚本・演出を担当してきたが、2020年より劇作、主宰業に専念。作品とアーティストと社会がより長いスパンで成熟していけるように、創作の環境そのものからつくり直そうと試行錯誤中。2014年に『カンロ』、2018年に『ヨブ呼んでるよ』、2020年に『終わりにする、一人と一人が丘』で岸田國士戯曲賞にノミネート。近年は、からゆきさんのリサーチや、幼稚園児~大学生との創作にもライフワーク的に取り組んでいる。

© 三浦雨林

鳥公園アソシエイトアーティスト
三浦雨林  Ulin MIURA

1994年生まれ。演出家、劇作家。隣屋(主宰/演出/劇作)、青年団演出部所属。日本大学大学院 芸術学研究科 舞台芸術専攻 修了。芥川龍之介の小説や、レフ・トルストイの戯曲など既存の作品を原案に、文字としての言葉と発話される言葉の差異を際立たせる手法で劇作・演出を行う。2020年以降、映像・美術を中心とするインスタレーションの手法も用いた演劇作品を発表している。

鳥公園アソシエイトアーティスト
蜂巣もも Momo HACHISU

1989年生まれ、京都出身。演出家。青年団演出部所属。グループ・野原主宰。2013年からより多くの劇作家に出会うため上京し、青年団に所属。戯曲が要求する極限的な身体を引き出すことで、圧縮された「生の記憶」と観客が出会う場所を演出してきた。2017年庭師ジル・クレマンの「動いている庭」に感銘を受け立ち上げたグループ・野原にて、演劇/戯曲を庭と捉え、俳優の身体や言葉が強く生きる場として舞台上の「政治」を思考する。

© 守屋友樹

鳥公園アソシエイトアーティスト
和田ながら Nagara WADA

演出家。2011年2月に自身のユニット「したため」を立ち上げ、京都を拠点に演出家として活動を始める。主な作品に、作家・多和田葉子の初期作を舞台化した『文字移植』、妊娠・出産を未経験者たちが演じる『擬娩』など。美術家や写真家など異なる領域のアーティストとも共同作業を行う。2015年、創作コンペティション「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう」vol.5最優秀作品賞受賞。2018年、こまばアゴラ演出家コンクール観客賞受賞。2019年より地図にまつわるリサーチプロジェクト「わたしたちのフリーハンドなアトラス」始動。セゾン文化財団2021-22年度セゾン・フェロー I。

鳥公園お盆部 宣伝美術
鈴木哲生  Tezzo SUZUKI

1989年神奈川県生まれ。グラフィック・デザイナー。2013年東京芸術大学美術学部デザイン科卒業後、隈研吾建築都市設計事務所勤務を経て、2015 年オランダ KABK デン・ハーグ王立美術アカデミー タイプメディア修士課程を修了。
HP:www.tezzosuzuki.com

©加藤甫

鳥公園お盆部 会計
五藤真 Makoto GOTOH

1985年生まれ。2014年から会計フリーランスとして複数の非営利団体、芸術文化団体に従事。2018年、「表現と文化のためのバックオフィス」を掲げる株式会社countroomを設立。個々人が各現場に赴き事務をサポートするスタイルを軸として、表現する人が安心して活動できる状況を創造すべく活動を続けている。

株式会社countroom代表取締役/ゲッコーパレードメンバー/NPO法人国際舞台芸術交流センター理事/一般社団法人ベンチ監事

制作チーム紹介

合同会社syuz’gen(しゅつげん)

合同会社syuz’gen(しゅつげん)は、舞台芸術業界を中心に活動するアートマネージャーのチームです。行政組織、民間企業、実演団体(劇団やダンスカンパニー等)の事業実現のカウンターパートとして、企画制作、現場運営、広報、票券管理、ボランティアマネジメント、国内外のツアーマネジメント等をワンストップで提供しています。様々な組織と協働し、多様な事業をともに実現することで、知見を常にアップデートしながら、変化の激しい現代社会での舞台芸術の可能性を模索しています。
また、持続可能な働き方を実現することで、経験豊富なアートマネージャーを育成し、知的専門職としてのアートマネージャーの地位と認知度向上を目指します。

HP:https://syuzgen.com/

演劇ネットワークぱちぱち

「演劇」を共通言語として、幅広い人たちと緩やかに繋がる場です。「面白そう」「楽しそう」「挑戦してみたい」、そういったシンプルな想いを大切に、個人と個人とが簡単にくっついたり離れたりしながら、演劇に触れることが出来る仕組みづくりを目指しています。2021年5月からのテスト運用を経て、参加条件を18歳から25歳までとし、9月から正式にスタートしました。

HP:https://hachiojibunka.or.jp/play/net88

助成

令和4年度 文化庁文化芸術振興補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

主催

公益財団八王子市学園都市文化ふれあい財団

芸術文化・コミュニティ振興等を推進し、市民の活動の支援を行い、心豊かな市民生活といきいきとした地域社会の発展に寄与する。地域における芸術文化・コミュニティ振興等を推進するため市が設置した専門機関として、名実ともに八王子市において中心的な役割を果たす財団に進化する。

お問い合わせ

(公財)八王子市学園都市文化ふれあい財団 芸術文化振興課
geishin78@hachiojibunka.or.jp(担当:荻山)