「演劇の友達できた!」高校生向けゴールデンウィーク集中ワークショップ【レポート】

みなさん、初めまして!

5月3〜5日のゴールデンウィークに開催した#マジゲキ~まじめに演劇を考える場~「高校生向けゴールデンウィーク集中ワークショップ」のファシリテーターのひとりをつとめました、大橋里乃です。

このワークショップでは、高校生とぱちぱちメンバーが一緒にさまざまな演劇のゲームや名作戯曲の読み込みをおこない、充実した3日間を過ごすことができました。
私のファシリテーターデビューでもあり、とても貴重な経験となりました。

3日間のレポートをたっぷりお届けします。ぜひお読みください!

#マジゲキ~まじめに演劇を考える場~とは?

演劇を続ける環境を作るコミュニティ「演劇ネットワークぱちぱち」による企画。
演劇に興味のある高校生が学校外の仲間と出会って演劇の楽しさ・豊かさを知ることを目指し、ワークショップを開催します。
ワークショップを進行するのは、演劇ネットワークぱちぱちに参加している18歳~25歳の「ぱちぱちメンバー」です。

さらに!

ワークショップで出会った仲間と一緒に、#マジゲキ~まじめに演劇を上演する場~として、
演劇公演にも挑戦する予定です!

#マジゲキ2024年スケジュール

2024年5月3日(金祝)~5日(日):ゴールデンウィーク集中ワークショップ

7月28日(日):夏休みワークショップ

11月~:公演稽古

12月21日(土):公演本番(八王子市学園都市センター予定)

「わあ、演劇公演もやるの?」と気になったあなた!
7月28日の夏休みワークショップに参加しませんか?
12月の公演に参加できるのは、ゴールデンウィークまたは夏休みワークショップに参加した方限定!

7月の参加申し込みはこちらから!⇒ https://hachiojibunka.or.jp/play/net88/net88_entry/8185

「参加してみたい!でも、どんなワークショップなんだろう?」と気になる方はぜひ本レポートを最後まで読んでくださいね。

ゴールデンウィーク集中ワークショップ1日目(5月3日)

開催場所:都立昭和高等学校
参加高校生:1年生 10人、2年生 5人、3年生 4人 計19人
ぱちぱちメンバー:若尾颯太(24歳)、畑野美彩(20歳)、浜穂友乃(大学1年)、大橋里乃(19歳)

この日を迎えるために、ぱちぱちメンバーと講師でたくさんの会議を重ねました!
お天気にも恵まれた初日です♪

午前

テーマ:「初めましてでも仲良くなれる?」

ファシリテーター:若尾颯太(俳優。桜美林大学卒業)

メニュー
・拍手リレー 
・名前を使ったリズムゲーム 
・空間で物を渡すゲーム 
・挨拶ゲーム 

などなど…たくさんのワークを使い、初対面の人とコミュニケーションを取っていきました。

ワークの2つ目まではミニゲーム要素が強く、3つ目以降はジェスチャー、テーマ、即興性などを取り入れ、お芝居に近い形のワークでした。 

どれも一見楽しいミニゲームなのですが、相手の顔をしっかり見ること、言葉をちゃんと伝えること、そしてちゃんと受け取ることを意識するだけで、だんだん相手の顔と名前が頭に自然と入っていきました。 

高校生からは

「名前やその人の好きな事などその人自身を知ることができた!」 

「みんなの発想力が凄かった、自分にはないものに気がつけた!」 

などの感想が集まりました。 

普段、初対面の人とのコミュニケーションでは、相手を意識する事を忘れてしまいがちなのですが、日常も芝居もコミュニケーションで成り立っています。改めて大切なことに気がつかせてくれ、そしてバッチリみんなと仲良くなれた素敵なワークでした! 

午後

ファシリテーター:中込遊里(演出家、プロデューサー。演劇ネットワークぱちぱち総合ディレクター)

テーマ:「世界の名作戯曲を読もう!」

メニュー
・西洋の戯曲の紹介 
・チェーホフ『プロポーズ』(喜劇)を声に出して読む 
・ベケット『行ったり来たり』(不条理劇)をチームで読み込み発表する

古典戯曲は何となく難しそう…と距離を置いてしまいがちでしたが、中込さんが現代の言葉に例えたり、噛み砕いて説明をしたりしてくださることで、私自身も高校生のみんなも楽しく理解することができました! 

特に面白かったのが、ベケットの不条理劇『行ったり来たり』を、グループに分かれて解釈をし発表をするワークでした。

発表の形は劇でもプレゼンテーションでもよいとのことだったので、各々さまざまな形でアプローチをしました。

あるチームは、この作品の登場人物の気持ちを深く解釈しプレゼンテーションをしてくれたり、ベケットがこの作品を見ている人に感じてほしかったことを演じながらプレゼンテーションをしてくれたり、インタビュー形式で発表してくれたチームもありました。

発表にはユーモアが溢れていて、新たな不条理劇が生まれた瞬間を目撃したかもしれません!(笑) 

壁を感じがちな古典作品も、噛み砕けばここまで読み込む事ができると知り、そして楽しむ事ができることを体感できたワークでした! 

私自身、ぱちぱちメンバーになって初めて参加した企画だったのもあり、初めましてのことが多くドキドキの初日でした。 

ですが、経験豊富な運営講師陣、優しいぱちぱちの皆さん、フレンドリーで活発な高校生のみんなのおかげで、演技にも刺激をもらえとても充実しました。

 自分自身も古典について学んだり、コミュニケーションを勉強したり、そして高校生のみんなの発想に刺激をもらえた充実した1日でした。 

ぱちぱちポーズで記念写真!

ゴールデンウィーク集中ワークショップ2日目(5月4日)

開催場所:八王子市北野市民センター
参加高校生:1年生 2人、2年生 2人、3年生 2人 計6人
ぱちぱちメンバー:若尾颯太(24歳)、畑野美彩(20歳)、森口夏希(大学3年)、合田篤慶(22歳)、大橋里乃(19歳)

午前

ファシリテーター:若尾颯太(俳優。桜美林大学卒業)、畑野美彩(俳優。桐朋学園芸術短期大学卒業)

テーマはそのままに、2日目は少しレベルアップし、「集団で同じ目標を達成する」という目的を加えた 

・椅子サッカー 

というコミュニケーションゲームを行いました。 

一つ空いている席があり、その席を鬼に座らせないようにみんなで協力をし椅子を死守するゲーム。

このゲームは相手の動きと、自分の動きによる効果を考えることのでき空間認知力アップの効果に加え、
舞台に立つ上では欠かせない、「集団で同じ目的を達成するためにどうすればいいのか」という協働の思考を鍛える事ができるワークです。 

説明だけ聞くと単純なのですが、動くとなかなかうまくいかず、最初の方は30秒も持ちませんでした…。 

ですが、打開策が! 

↑のように円になって移動距離を極限まで短くすればいいのではないか? 

期待は命中!一番長く席を死守する事ができました。 

今回は時間が短かったですが、もっといろいろな方法を編み出せそうな気がしました!またやりたいです。 

午前の後半!

ファシリテーターを畑野さんに交代。

「俳優が演技をするときに大切にすること」をテーマに 

・指先だけで相手を誘導するワーク 
・『ロミオとジュリエット』の1シーンを用い、登場人物の「目的」を考える 
・「一緒に行こう?」「嫌だ」ゲーム 

を行いました。 

進行する畑野美彩さん(一番左)

畑野さんは初めてのファシリテーションに挑戦です!

ですが、初めてとは思えないくらい進行もスムーズで、とても簡潔でわかりやすいワークでした。 

「台本を読み込むってどうしたらいいんだろう…?」

俳優を目指す上で誰もが一度はぶつかる壁。

最初のワークではそんな台本の読み込みの考え方を「目的」をはっきりさせることで理解を深めていきました。 

シェイクスピア作『ロミオとジュリエット』のバルコニーのシーンを用い、古典の難しい言い回しを読み込んでいきました。

そのセリフの役割、役は相手をどうしたいかという目的の部分から読み込みをしていきました。 

高校生の感想は

「普段台本を読む時に気が付けていなかった、セリフの裏にある気持ちを丁寧に読み解く事ができた。とても新鮮で、今後も続けていきたい」

俳優の第一歩を踏み出す事ができた効果抜群のワークでした。 

午後

ファシリテーター:木皮成(ダンサー、振付家)

テーマ:「世界の名作戯曲を読もう!」

メニュー
・モリエール『守銭奴』(喜劇)を声に出して読破する

見事、最初から最後まで全員で読破!

かかった時間はなんと、約4時間!なかなか大変でした… 

1人で古典戯曲を読みきるのはなかなかハードルが高いと感じてしまいがちですが、みんなで読む事で楽しく読め、そして様々な角度から古典戯曲を見つめることもできました。 

たくさんの役をみんなで交代しながら読んだこともあり、人によって役の解釈が違うのも面白かったです! 

読みたいけど1人で読むにはちょっと手が出ないと感じてしまう皆さん!ぜひ仲間を集めて読んでみてはいかがでしょうか? 

今回は高校生限定ワークショップでしたが、演劇ネットワークぱちぱちメンバーになれるのは18~25歳。気になる戯曲をみんなで集まって読む企画をオンラインで何度か実施しています!(演劇ネットワークぱちぱちでは随時メンバー募集中です!)

2日目も充実!

ゴールデンウィーク集中ワークショップ3日目(5月5日)

開催場所:都立日野高等学校
参加高校生:1年生 5人、2年生 6人、3年生 4人 計15人
ぱちぱちメンバー:若尾颯太(24歳)、森口夏希(大学3年)、大橋里乃(19歳)

午前

ファシリテーター:若尾颯太(俳優。桜美林大学卒業)、大橋里乃(俳優。北海道芸術高等学校・横浜キャンパス・声優コース卒業)

メニュー
・ピンポンパンゲーム
・「最初と最後」ゲーム 
・ステータス即興劇

最終日ということで、内容を少しレベルアップして即興劇のワークを行いました。 

若尾さんからは「最初と最後ゲーム」。

最初の言葉と最後の言葉をくじでひき、それを必ず使い成立させる即興劇です! 

言葉をいうだけなら簡単なのですが、これにプラスして、テーマも守りながら劇をします! 

とても難しい条件の中でしたが、条件をクリアしつつ面白い劇をみんな披露してくれました。 

意識する事が多く大変でしたが、参加した高校生からは

「楽しかった」 

「ぱちぱちメンバーや演劇の先輩方のレベルの高さに驚き、そして学びもあった」 

と、互いに刺激をもらえたワークでした。 

そして、即興劇のワーク2つ目!

ファシリテーターは、私、大橋里乃です。ファシリテーターデビューを飾りました! 

私が行ったのは「ステータス即興劇」

ステータスとは位(くらい)、地位を表すもの。 

グループに分かれ1〜5までの数字が書かれたくじを引き、互いに番号は知らせず、相手の芝居を見ながら自身のステータスを表現するワークです。

即興劇を終えたら、見ていた人たちと誰が何番かの答え合わせをします。 

このワークは、即興により瞬発力を鍛えることはもちろん、「自分の表現していることは実際相手にどのくらい伝わるのか」を体感することが目的です。 

場所を指定して即興スタート。最初はわかりやすい「学校」をテーマに行い、次は「病院」というテーマでやりました。

院長が位が高いのか、患者が高いのか、など価値観の違いもでてきて、そこをどう表現すればよいか、なんていう課題も見つかりました。 

ですが、回数を重ねるごとに、位が極端に高い人と低い人がはっきりと表現することで、中間の位の人が表現しやすくなり、そうすればステータスが伝わりやすいのではないか!という一つの解を見つけることができました! 

初ファシリテータということで、拙い部分は多かったですが、自分自身も客観的に芝居を見て学び、そして相手に教える、伝える部分を鍛えることができ、新たな成長への課題を見つけることができた貴重な経験でした。 

午後

ファシリテーター:早坂彩(演出家、ワークショップファシリテーター)

テーマ:「世界の名作戯曲を読もう!」

メニュー
・シェイクスピア解説
・シェイクスピア『マクベス』(悲劇)のワンシーンを創ってみる

3日目の「名作戯曲を読もう!」はシェイクスピア作『マクベス』の第一幕・魔女のシーンを読み込みました。 

グループに分かれ、最終的に発表することを目的に取り組みました。 

古典戯曲で躓いてしまうポイントとして、時代背景の理解が難しい事があります。

ですが、今回は早坂さんのアドバイスの元、マクベスの登場人物を現代に喩えたらどんな人かな?という風に考えながら行ったことで、物語の解像度がグッと上がりました! 

発表では、特に魔女の解釈がチームにより異なりとても面白かったです。

あるチームは悪そうな魔女だったり、とても仲の良さそうな悪戯っ子魔女だったり、マクベスのファンのような魔女もいたり、同じ文章を扱っているのにこれだけ解釈が違うことにたくさん刺激をもらいました。 

またグループワークを通して、高校生からは 

「自分の考えていた世界観と、他の人が考えた世界観が混ざり合ってできた作品に、愛着が湧いた」 

との感想ももらいました! 

古典戯曲への壁も突破し、尚且つ作品に愛着を持てるようになるワークショップ。 

私自身も受講していて素敵な表現と作品に出会うことができました。 

参加した高校生の感想

参加した高校生のみなさんの感想を一部紹介させていただきます。 

Q.今回のワークショップを経て、みんなとコミュニケーションは取れましたか? 

A.新しい友達ができた! 

A.全員が高校生で、演劇をしているという共通点があって、同じワークショップに自分から意欲を持って参加しているおかげか、初めて会って、初めて話す相手でもなんとなく仲間のような感覚があって親しみやすかったです。

A.ぱちぱちの皆さんもすごく優しくて、積極的に話しかけてくれたり、困ったときは全体を引っ張って話を回してくれたりして、とても楽しかったです。 

Q.今回のワークショップを経て、あなたの考える演劇の幅は広がりましたか? 

A.広がった。初めて知った戯曲もあったし、シェイクスピアの中でも今までやったことのない戯曲についてきちんと深いところまで解釈できて、解像度を高く演じられた。 

A.やること学ぶことすべてが新しいことだらけだった!

A.人に言葉を刺すという演技で重要な事を教わったり、ステータスという概念を知ったりできた。

などなど…他にもたくさんの回答そして高い評価を実感してもらえました! 

回答してくれた高校生の皆さん、ありがとうございました。

初めてファシリテーターに挑戦した感想

私、大橋としては、充実しすぎた3日間でした!

自分自身も学びたかった名作戯曲を、運営講師の方、そして高校生のみんなと深く学び、3日目にはファシリテーターの経験もさせてもらえて、こんなに充実した3日間は、自分にとって大切な経験になりました。 

ファシリテーションは、講師の武井希未さん(俳優)にアドバイスしていただき、ワークショップ進行中も見守って補助していただきました。

即興劇のアドバイスをする武井希未さん(手前)

そして、

会場を貸してくださったり取りまとめてくださった学校の先生方、参加してくれた高校生の皆様、本当にありがとうございました。 

次はこのメンバーで舞台を作るのか…と考えるととてもワクワクします! 

次回の#マジゲキ~まじめに演劇を考える場~は、7月28日(日)の夏休みワークショップ!

更なる演技力アップのためのワークショップを行います!それ以外にもみんなで親睦を深めるなど楽しい要素も盛りだくさん沢山の予定です! 

皆様ぜひまた会いましょうね☺️ 

あなたも#マジゲキに参加しませんか?

本レポートを読んで、自分も参加したい!と思った高校生へ、お申込みはこちら⇒https://hachiojibunka.or.jp/play/net88/net88_entry/8185

ワークショップのファシリテーションに挑戦したい!と思った18歳~25歳の方は、まず「ぱちぱちメンバー」にお申し込みください⇒ https://hachiojibunka.or.jp/play/net88/member

このレポートを書いた人:大橋里乃(おおはしりの)

2004年生まれ。2024年3月より演劇ネットワークぱちぱちに参加。北海道芸術高等学校・横浜キャンパス・声優コース出身。
声優の経験を経て、現在は舞台俳優を目指している。幅広い演劇の知識や経験を積みたい。