


演劇ネットワークぱちぱちのミッションは、<八王子から発信する、演劇を続けるための環境作り>です。
そのために、18歳~25歳という社会に飛び出したばかりの世代が、「自分らしい演劇の続け方」を考えたり試したりするための「仲間」「知識」「場所」と出会えるプラットフォームを作りました。劇団とも学校とも違う、演劇を通したゆるやかな繋がりの場です。たくさんの取り組みを行い、それがどうなったのかを発信していきます。
このような取り組みをしています。
ぱちぱちメンバーによる企画の開催
ぱちぱちメンバーの「やってみたい」「挑戦してみたい」を形にする演劇の企画を開催します。
企画内容や目的に合わせて、演劇ネットワークぱちぱちという場が「活動資金の補助」「活動場所の提供」「広報・宣伝の協力」をします。企画の進め方の相談会も随時行います。
<これまでに実施された企画の一部>

「ひとり」を味わうワークショップ/芸術文化観光職専門大学を語る:ディレクター・竹内ミズキ

多摩ニュータウンヒーロー部:ディレクター・奥山樹生

川端企画・稽古会:ディレクター・川端優典

月刊アフタートーク:ディレクター・寺原航平

演劇を通したさまざまな世代や地域との交流
18歳~25歳を中心としつつ、世代をまたいで、演出家・劇作家や劇団と一緒に創作する取組をしています。また、高校生以下の方やそのご家族との演劇を通した交流を行います。
<企画の例>
◎ユース世代が子どもと一緒に創る演劇『むかしむかし、あるお家に』:演出・中込遊里(八王子市・立川市で上演)
◎きょうげんあそび(幼児向け演劇):ディレクター・松尾曉那(立川市・練馬区・八王子市で上演)
◎観劇ツアー
『桜の園』SPAC(静岡県舞台芸術センター)/「豊岡演劇祭」(兵庫県豊岡市)/『プラトニック・ボディ・スクラム』FUKAIPRODUCE羽衣(東京都 本多劇場) 他
◎高校生とプロの演劇人が本気で演劇をつくる11日間:ディレクター・早坂彩(八王子市で上演)
◎劇団「屋根裏ハイツ」「かるがも団地」との共同制作
【常時】ぱちぱちメンバーの募集
ぱちぱちメンバーになるには、無料のコミュニケーションツールに登録するだけ。メンバーになる時点で、 18歳(高校生不可)~ 25歳 であれば誰でもいつでもメンバーになれます。演劇経験、学生・社会人不問です。八王子や近隣の地域だけではなく全国から参加できます。
コミュニケーションツールでは日々さまざまな情報の交換をしています。ユース世代向けのお得な観劇やワークショップの情報や、出演者募集、勉強会の開催など…。興味のあるコンテンツがあれば参加したり、自分で企画を立ち上げて実行することも可能です。

ぱちぱちサポーターの募集
演劇ネットワークぱちぱちの運営を支援してくださる方を募集しています。2023年5月募集開始予定です。
→ぱちぱちスポンサーを募集することになりました。近日募集開始予定!
ディレクターメッセージ
中込 遊⾥(なかごめ ゆうり)/演出家/鮭スペアレ代表/⼀般社団法⼈AsoVo代表
1985年東京都日野市生まれ、都立八王子東高校卒業。
日本大学芸術学部演劇学科在籍中に「鮭スペアレ」旗揚げ。
劇作・俳優・演出を経て、2014年より演出に専念。2013年・2014年利賀演劇人コンクール「奨励賞」受賞。2016年~拠点とする立川市を中心に地域の中高生と演劇創作を行う「たちかわシェイクスピアプロジェクト」を主宰。
2019年、2020年「八王子学生演劇祭」総合ディレクターを経て、2021年より「演劇ネットワークぱちぱち」ディレクター。
2022年5月、The International Prize The Naked Theatre by Teresa Pomodoro(Spazio Teatro NO’HMA、イタリア・ミラノ)に『鮭スペアレ版・マクベス』で招聘され、審査員特別賞を受賞。
その場に集う人々の力をどこまでも信じることから作品を編み出すことをモットーとする。

演劇は、出演者、スタッフ、作家、そして観客という多くの他者が集まって、それぞれ違う考え方や生き方をすり合わせながら形作ります。難しくて繊細な作業です。だからこそ、様々な人の考え方がミックスされた豊かな空間と時間が生み出されます。
2019年から私が総合ディレクターを務めた「八王子学生演劇祭」では、その演劇の難しさと楽しさを学生のみなさんと共有しながら、演劇作品を創って発表してきました。その経験を活かし、もっともっと広い世界に旅立とう!という決意を込めて立ち上げたのが「演劇ネットワーク ぱちぱち」です。
私が高校生や大学生と一緒に演劇を創作する中で一番問題に感じていたことは、「演劇を続けていく環境がない」ということです。
演劇に興味を持っても、どうやって学校生活と演劇を両立させたらいいのか?卒業してからも演劇を続けるには?
周りの人に演劇活動を理解してもらうには?
演劇が身近にある生活を送ることは、そんなに難しいことなのだろうか?
いや、たくさんの同じ思いを持った人たちが集まれば、それほど難しいことではないはず。
そのような思いから、「演劇ネットワーク」が生まれました。個人と個人とが簡単に一緒になったり離れたりしながら、演劇を楽しむことが出来る仕組みです。
一人ひとり違う素地・経験を持った人たちが集まって、わくわくする企画があちこちで立ち上がり、好きなように好きなだけ参加できるのが「演劇ネットワーク ぱちぱち」です。若い世代が中心となり、立場や年齢の境目を取り外しながら「演劇」をキーワードとしてゆるやかに繋がれる場を目指しています。
私を始めとする立ち上げメンバーの「たくさんの人が気楽に演劇を楽しめる世の中を作りたい」という思いを叶える場所として、長い時間をかけて、ゆっくりたっぷり育てていきたいと思っています。
2021年9月
演劇は必要なのだろうか?とずっと考え続けています。
平成28年度の内閣府による世論調査の「この1年間に⽂化芸術を劇場などで直接鑑賞したことがあるか」* への回答では、40.6%が「鑑賞したことはない」そうです。(演劇だけではなく美術や映画など⽂化芸術全般。演劇に限るともっと低いはず。)
「なぜ鑑賞したことがないのか」への回答では「時間がなかなか取れないから」が46.1%と最も⾼く、続いて「関⼼がないから」が28%だそうです。「時間が取れない」と⾔われると「そうだよなあ、みんな忙しいからなあ…」と納得してしまいそうですが、つまりは限られた24時間のうちでの「⽂化芸術の優先順位が低い」ということでしょう。演劇に⻑年携わる者としては「優先順位が低い」ことは残念ではありますが、いきなり状況を変えられるかというと、現実的に考えてとても難しいでしょう。
けれど、この頃起こりがちな「優先順位が低い」ことを「切り捨ててよい」と捉える⾵潮は変える必要があると強く思います。たしかに、現在の飢えを凌ぐには演劇ではなくて栄養ある⾷事が⼀番効果的かもしれません。しかし、芸術のような⼈の⼼を形作るがゆえ効果が⽬に⾒えてわかりにくいもの=無駄/贅沢に⾒えるものは、他⼈と関わりながら⽣きる⼈類の知恵の源となり、未来を創るエネルギーになります。
とくに、⾝体ひとつが出発点となる演劇は、誰もが気軽に体験できるという点で優れています。だから、「演劇ネットワークぱちぱち」では、未来を創っていく若者たちが演劇をキーワードとして⽣み出したアイディアを形にし続けます。
その中には、今すぐに答えの出ないものも多くあります。しかし、今はわからないけれど、ずっと先に繋がる⼤発⾒のはじめの⼀歩かもしれません。未来を創造する無限の可能性を⽣み出す場が「演劇ネットワークぱちぱち」です。ゆっくり、たっぷりと育てていきます。
* https://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-bunka/2-1.html
2022年3月
「仲間」「知識」「場所」「金銭」これらはすべて演劇に必要なものです。その一方で、演劇を「続ける」ためには最も必要なものがあります。「切実さ」です。
私自身の話をします。
観劇体験を通して幼少期に演劇を好きになって、部活で演劇を始め、今日まで休まず演劇を作っています。
中学でも高校でも、演劇がとにかく好き!で突っ走ってきました。大学では演劇学科に入り、仲間もできて、知識も(些少ながら…)つきました。
大学を出てから、情熱だけでは演劇を続けられないということを知りました。豊かな知識・経験はもちろんのこと、創作のための予算、生活費を工面すること、チームとの良質なコミュニケーションなど…、あらゆる技術、計画性、そして運も必要です。
足りないものも多くあるけれど、私が演劇を続けられるのは、演劇の力を信じているからだと思います。
演劇は社会の中で生きていくための力を与えます。時に圧力となって支配してくる「社会の正しさ」を揺さぶる力。「人間とはなにか」という答えのない難解な問いを、色々な人と一緒に楽しく思考する場をひらく力。私にとっての演劇は、水や食料と同様、生きるために切実に必要なものだなと思います。
ぱちぱちに集まる若者たちも、それぞれの切実さを抱えています。
立ち上げた当初は10人だったネットワークは、2023年5月時点で70人に届こうとしています。多くのコンテンツが2022年も開催されました。アニュアルレポートでは、その中でも多くの人にひらいた企画を中心に掲載しましたが、すべてのコンテンツ、コミュニケーションが価値あるものだと思っています。ウェブサイト・SNSで詳細に報告しています。
ウェブサイトのデザインを3月に一新しました。「いろいろな考えを持った人が集まり、多種多様な演劇の続け方を試す」という理想を、「異星人が宇宙で出会って演劇を楽しむ」というイメージで表しました。イラストはぱちぱちフレンズ「かるがも団地」の古戸森さんです。ぜひご覧ください。
今年度のぱちぱちの活動の中で特に印象的だったことがありました。
12月にオンラインで開催した「なんとしても来年4月に自作の脚本で初めての演劇公演を打ちたい松井さんを応援しようの会」でのこと。
タイトルのままの企画で、大学1年の松井さんの悩みを年上のメンバー2人が聞き、劇場の予約方法や、人をどう集めるかなどのアドバイスをしました。
いろいろな苦労があった松井さんでしたが、無事に4月に仲間を集めて公演ができたようです。私としてもとても嬉しかったのですが、なにより心が動かされたことがあります。
企画の話をしながら、松井さんが「演劇の話ができるというだけでとても嬉しい」と言ってくれたことです。
演劇をしたい、という切実な気持ちが伝わってきた瞬間でした。
人によって演劇のとらえ方は違います。気軽に趣味程度にという人もいるし、海外公演を目標にする人もいます。
演劇にはいろいろな形がありますが、すべての演劇はひとりではできません。だからこそ楽しい。どんな演劇であろうとも、それが切実に存在するのであれば、必ず人を巻き込む力を持ちます。
演劇ネットワークぱちぱちでは、ユース世代が主役になって、仲間を増やしながら、切実にそれぞれの演劇に向き合っていきます。
2023年7月
ぱちぱちと一緒に活動する仲間たち
2023年度の協働団体
ぱちぱちを運営している人たち
主催:公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団
運営:一般社団法人AsoVo
2023年度の運営メンバー
- エグゼクティブプロデューサー:米倉楽(公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団)
- プロデューサー:荻山恭規(公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団)/木村愛美(公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団)
- 総合ディレクター:中込遊里(鮭スペアレ/一般社団法人AsoVo)
- ディレクター:早坂彩(トレモロ)・齊藤舞夕(一般社団法人AsoVo)・松尾曉那(一般社団法人AsoVo)
- 広報アドバイザー:河野桃子
- 広報チーフ:伊藤優花(一般社団法人AsoVo)