「インド神話を演劇に!」高校生向け夏休みワークショップ【レポート】

みなさん、こんにちは!演劇ネットワークぱちぱちメンバーの大橋里乃です。

#マジゲキ~まじめに演劇を考える場~「高校生向けゴールデンウィーク集中ワークショップ」のレポートに引き続き、7月28日の夏休みWSのレポートもお届けします!

#マジゲキ~まじめに演劇を考える場~とは?

演劇を続ける環境を作るコミュニティ「演劇ネットワークぱちぱち」による企画。
演劇に興味のある高校生が学校外の仲間と出会って演劇の楽しさ・豊かさを知ることを目指し、ワークショップを開催します。
ワークショップを進行するのは、演劇ネットワークぱちぱちに参加している18歳~25歳の「ぱちぱちメンバー」です。

さらに!

ワークショップで出会った仲間と一緒に、#マジゲキ~まじめに演劇を上演する場~として、
12月21日(土)に、高校生とつくるインド神話『ラーマーヤナ』を上演します!

詳細はこちら ☆要予約(立ち見は予約不要)☆

インド神話『ラーマーヤナ』をテーマに演技を楽しもう!

開催日時:2024年7月28日
開催場所:大学セミナーハウス
参加高校生:10人 ぱちぱちメンバー:10人 講師:平川和宏さん、木皮成さん、武井希未さん、早坂彩さん

「相手を動かす、動かされる」というテーマのもと、12月21日の本番も視野に含めたWSを行いました。
上演する作品は『ラーマーヤナ』というインド神話。神話には現実離れした人物、場面展開が多く出てきます。
「神様っぽさ」など「そうである」ように見せるにはどういった表現力が必要になるかを考え、ワークを楽しみました。

午前①体を使おう

ファシリテーター:木皮成(ダンサー)

最初にウォーミングアップも兼ねて、木皮成さんに「体を使ったワーク」をやっていただきました!

成さんのワークは、「ほぐそうとしていないのに気がついたら体がほぐれている」のです!不思議ですよね?

具体的には、相手を信頼し、体を預けたり、預けられたり、体でコミュニケーションをしっかりと行うことで、初対面の空間での緊張感と体を同時にほぐしているのです。

たくさんのワークの中でとても楽しく体をほぐせたのが、2人1組で、てのひらを触れ合わないくらいの距離で合わせ、お互いを操るワーク。言葉を使わずに、なんとなく相手がどう動きたいのかを察しながら自由に動きます。

そして、ある程度動いたら、となりのペアの間を潜ってみたり、他にペアになりたい人がいたらその人とくっついてみたりと、空間を自由に動いていきます。すると、体も動かす事もできて、不思議とみんな楽しく踊っているようにも見えるのです。

踊るのが苦手と感じている人も多いですが、踊るって自分にもできるのかも!と感じることもできて、体もほぐれた素敵なワークでした。

午前②ぱちぱちメンバーによるワーク!

「ペア探しゲーム」ファシリテーター:岡田隆成(24歳)

ぱちぱちメンバーによるワーク1つめは、「ペア探しゲーム」。

1から50までの数字が書かれた紙を1人1枚引き、大きさの近い人とペアを作るゲームです。
数字を直接言わず、指定されたテーマのもので自身の数字の大きさを相手に伝え、ペアを探していきます。

1回目は「動物」、2回目は「東京を中心とした都道府県」で行いました。
制限時間もある中でコミュニケーションを取り、ペアを探すのは想像しているよりも大変でした。

結果は、「東京を中心とした都道府県」の方が誤差が小さいペアが多くできました。
テーマによって違いがあったのはどうしてだろう?と、全員でフィードバックをした時、「2回目の方が、大きさの上限があるから具体的に示すことができたが、動物は大きいものがたくさんいるため上限がどこか分かりにくく具体的に示すのが難しかった」との意見が出ました。

コミュニケーションをしっかりと取ることのできるゲームでもありましたが、自分の価値観と他の人の価値観を知ることもできて新たな気付きが生まれたワークでした!

「テーマジェスチャー」ファシリテーター:大橋里乃(19歳)

2つめは、私が行った「テーマジェスチャー」です。

各グループにテーマを渡し、テーマに沿ったポーズをチームのみんなでとり、そのテーマを表す一場面を作ります。

2つルールがあります。

①コミュニケーションを取らないという前提で臨むこと。

②ステージに入る順番をくじ引きで決めること。

前の人のポーズに合わせて後の人たちはテーマを表すポーズを作っていきます。「相手の動きを見る、そしてそれを受け取りどう表現するか」を考えることができるワークです。「歌舞伎」、「美術館」「花火大会」…などのテーマで行いました。

5~6人くらいのチームを作り、順番に行い、何に見えていたのか、またどうやったら上手くいくかをみんなで話し合いました。

その結果、見ている人にテーマが伝わりやすかったのは「全体をより見られていたチーム」ということがわかりました。

自分だけでテーマを表そうとするのではなく、誰かが表しているものを分かりやすくするために、表しているものの一部になると、全体の一貫性も出て、結果伝わりやすくなるという発見がありました。

また、講師の方々からは、ステージに入る順番を利用し、物語のようにポーズを繋いでいって最後になったらテーマがわかる!というやり方も面白いよね、というアドバイスもいただきました。

「相手を見て動く」ということを体感できたワークでした。

「椅子から立たせるゲーム」ファシリテーター:若尾颯太(24歳)

3つめは、若尾颯太さんが行った「椅子から立たせるゲーム」です。

こちらのゲームは至ってシンプル、椅子に座っている講師の先生をどうにか立たせるゲームです。

ルールは…

①入る順番が決まっている。

②喋れるのは1人目と3人目だけ。

③脅しや暴力を使ってはいけない。相手を気持ちよく立たせましょう!

このルールのもと、先ほどの5~6人グループをシャッフルして行いました。

人を立たせる、案外簡単なのでは?と思うのですが、その場から立たせるには明確な理由と状況が必要になります。普段電車で座っていて、突然立ってくださいと言われても立ちませんよね?立たなければいけない状況を自分たちで作るというのが今回のゲームの難しいポイントでした。

忙しすぎる厨房、デスゲームで人が倒れちゃった、映画館で席を間違えていた!
……などいろんなシチュエーションで行いましたが、今回はどのチームも立たせることはできませんでした。

ですが、惜しかったチームもありました。

火事が起きた学校、というシチュエーションで、座っている人を学校の先生にしたのです。
このチームのフィードバックを行った時、実際に座っていた講師の平川さんが「色々コミュニケーションを取るより、緊急性のある出来事が起きた方が自分に当事者意識が出る」とおっしゃっていました。

つまり、立とうという気持ちに持っていくことはできていたのです!
確かに他のチームでは、座っている人に当事者意識を持たせるという部分と、相手を気持ちよく立たせるという部分が足りないということに気がつきました。

特に、相手に失礼な事をしたり、怒らせたりしてしまうと立たないという意思が固まってしまうので逆効果、ということに気がつくことができました。自分たちが普段からどう意思を持って行動しているのか、そして今回のテーマである「相手を動かす、動かされる」を強く体感することができたワークでした。

午前中は、バッチリ体を動かし、みんなとたくさんコミュニケションを取ることもできて、とても楽しい時間でした!お昼休憩を挟み、午後は講師の方々のワークショップに入りました。

午後①声の可能性を広げよう

ファシリテーター:平川和宏(俳優)

午後のワーク一発目は講師の平川和宏さんによる発声に関するワークです。日常生活の悩みから演劇をするときの悩み、そもそも発声練習が合っているのか?というところから見直しました。

①声の悩み→発声へ

初めに、声に関する悩みを言い合いました。
声によって印象が怖く見られてしまうなどもありましたが、1番多かったのが、「どうしても声が枯れてしまう」という悩みです。演劇をやる上で声は商売道具ともいえます。

そこで、平川さんが図と一緒に発声のポイントを教えてくださいました。

①顎下から首にかけての前を使わず、後ろから音を持ってくるイメージを持つ。

②軟口蓋をあげて、つむじのあたりから音を出すイメージを持つ。

すると、大きい声を出そうとしてないのに、響きが変わって聞き取りやすい発声ができました。

②テキストを読んでみよう「羅生門」

次に①でやった発声方法を活かして、実践です。読んだテキストは芥川龍之介の『羅生門』。2人の高校生が率先して挑戦してくれました。

古典的な言い回しが多く、最初は苦戦してしまいましたが、平川さんが教えてくださったのが「目的をもって読むこと」が大事ということ。

私たちは普段何をするにも、その行動には目的が必ずあります。
ことテキストに置き換えると、この文章では何を伝えたいのかが大切になっていきます。

その伝えたいものに合わせて①の発声方法から、声の出し方を合わせて変えていくとそれが「読む」ではなく「演技」になるのです!

挑戦してくれた2人の高校生も、見違えるほど変化を感じられました!

ちなみに、表現に合わせて声を変えるときは、つむじから出すポイントは抑えつつ、顎下から首にかけての前側を使い調整するのがポイントとも教えてくださいました。

発声方法から演技の幅の広げ方も学ぶことができました!

午後②『ラーマーヤナ』を知ろう!演じてみよう!

ファシリテーター:早坂彩(演出家)

#マジゲキ夏休みWSの最後は、早坂彩さんによる『ラーマーヤナ』。

12月21日に八王子市学園都市センターで実際に上演する作品です。

①『ラーマーヤナ』を知ろう!あらすじ、起源、相関図

②『ラーマーヤナ』を読んでみよう!

③チームに分かれて創作

④発表

を行いました!

『ラーマーヤナ』とは?

古代のインドの人たちの善意と有理への道の追究の叙事詩。
ラーマ王子の生き方と業績、ならびにその貞淑な妃シーターとの愛情を賛歌し、羅刹王ラーヴァナのシーター妃誘拐、それに対して南インドの猿公族の協力を得て、さらに宰相のハヌマーンの大活躍などが、全七章で描かれているお話です。

(Wikipedia参照)

今回のワークショップでは、第一章「ハニュマーンの活躍」を5つの段落に分け、5グループでそれぞれの段落を解釈し、創作を行いました。

まず、インドについて知っていることを取っ掛かりにして歴史に触れてから、早坂さんが『ラーマーヤナ』のお話の相関図を説明してくださいました。

みんなで理解を深めた後、グループワークに入りました。

1回目の発表は、各チームで読み解き、発表をしました。

古典の文章は読み解きづらいと感じがちですが、GWワークショップで古典演劇に触れ、「目的をはっきりさせながら読むこと」が大切だと学んだ経験も活かし、みんなで協力し、読み解いていくことができました。

約30分という短い時間でしたが、どのチームも物語の伝えるべき部分を捉えることができて、客席を使った演出や、身体表現で水や炎を表すなどさまざまな表現が生まれ、素敵な作品が出来上がりました!

2回目は、1回目を踏まえ、早坂さんからの演出と講師の方々のアドバイスを受けて、各チームをつなげてひとつの作品を上演しました。

頂いたアドバイスの中でも発表を行う上で大切だと感じたのが、表現を具体的にするということ。

「美しい女性」とはどんな存在なのか、その人の立ち振る舞いもそうですが、周りの反応によってその人がどう見えるか大きく変わります。
例えば、この世界では登場人物のシータは絶世の美女なのです。本人が高貴に美しく振る舞うのもそうですが、周りの人が絶世の美女と出会ったときの反応をすることでよりその存在が色濃くわかります。

自分たちが思っているよりも大きく、はっきりと、どういった人間か、存在かを表現することによって、より立体的になると学ぶことができました。

発表が終わったチームは客席で他のチームの発表を観劇しました。
1回目の発表の時より、表現が具体的になり、見ている人たちの反応がより大きくなった変化を感じることができました。

午前中で行ったワークで相手を意識し、午後では発声から表現の仕方を身につけ、最後には今までやったワークを取り入れ、実際に表現に移すことができました。今回のテーマであった、「相手を動かす、動かされる」を1日をかけて習得することができました!

まとめ

GWワークショップに引き続き夏休みWSもご参加いただいた方、ありがとうございました。

GWと夏休みWSに参加した高校生と、ぱちぱちメンバーと一緒に、いよいよ12月21日に『ラーマーヤナ』の上演を迎えます。夏休みWSで出来上がった『ラーマーヤナ』は、どのチームもすごく面白く、舞台で上演されることを考えるとワクワクがとまりません!

12月21日は、八王子市学園都市センター・イベントホールにぜひお越しください!

高校生とつくるインド神話『ラーマーヤナ』公演情報

ぱちぱちの遊べる演劇イベント『わーわーフェス』内での上演です!

日時:2024年12月21日(土)13時開演

場所:八王子市学園都市センター・イベントホール

ご予約など詳細はこちらのページをクリック!

このレポートを書いた人:大橋里乃(おおはしりの)

2004年生まれ。2024年3月より演劇ネットワークぱちぱちに参加。北海道芸術高等学校・横浜キャンパス・声優コース出身。
声優の経験を経て、現在は舞台俳優を目指している。幅広い演劇の知識や経験を積みたい。