ユース世代が「自分にとっての演劇の続け方」を試す場「演劇ネットワークぱちぱち」のメンバーの活躍と魅力を、総合ディレクター中込遊里が紹介します。
竹内ミズキ(たけうちみずき)
2000年11月9日、長野県松本市で生まれる。2歳でフィリピンへ移住。3歳で香港、7歳~8歳は台湾で暮らす。小学3年生の終わりから八王子市で育つ。2021年度、芸術文化観光専門職大学に入学。
どんなものでも、いただいたものは残さず美味しく食べます。
2023年2月、竹内さんが大学2年・22歳時のインタビューです。
演劇をはじめたきっかけ~高校演劇部での出会い~
中込
ミズキとは、私が外部指導員をしている都立高校の演劇部で知り合いました。まずは、演劇をはじめたきっかけを教えてください。
竹内
高校1年の時までほとんど演劇は触れ合ってこなかったです。高校に入学して、担任の先生に「全員部活に入らないといけない」と言われて、汗をかきたくないし、大人数でわいわいするのもイヤだったので、消去法で演劇部でした。コーラス部とか吹奏楽部は、音楽が苦手だったので。本当に成り行きで始めたっていう感じですね。
中込
やってみたら、どんどんはまっていったっていうこと?
竹内
そうですね、面白い作品を見てやる気が出たというところがありますね。観劇も、あまりする機会がなかったんですが、高校演劇の都大会(中央大会)を見に行ったんですよね。自分の高校は出てなかったんですが。その前の地区大会で、他校の演劇部が、都大会に行けなくて号泣しているのを見て、自分の高校と違うなあって。もしかして、演劇って、真剣にやってたら面白いんじゃないか?って。自分の高校では、楽しさを優先させる感じで、もっと本気でやる方がいいんじゃないかと思っていたところだったんです。
そういうわけで都大会に見に行ったら、めちゃくちゃ面白かったんです。同じ年齢でこんなに面白いものを作れるのか。それで、目標が明確になりました。部活改革みたいなことを自分で始めました。都大会、その先の関東大会、全国大会も行きたいぞ、と。
中込
へえ、そうだったんだね!それで、無事に都大会に行けたんだよね。
竹内
はい、行けましたね。都大会で終わっちゃいましたけど。でも、審査員(※大会では劇作家や演出家などの専門家が審査員を務めています)の方の考えがいろいろあるということも知りました。演劇っていろいろなジャンルがあるんだなと。だから、自分たちの作品がダメだったから上にいけなかったわけじゃないんだとも思いました。
「クソガキ」だった⁈子ども時代
中込
子ども時代はどんな人でしたか?
竹内
クソガキでしたね(笑)応援団長とかやってました。クラスで一番やかましくて、女の子に悪口言うタイプ。
僕なりに闘う理由があったんですよ。クラスで上下関係が生まれるのが好きじゃなくて、たとえば、汗かきの男の子が女の子に疎まれているのを見ると、女の子に悪口言ったりしてましたね。他にも、ちょっといじめられてるみたいな子がいたら、放課後に声かけて「一緒に遊ぼうよ」って言ったり。
中込
ヒーローだね!
竹内
いや、嫌だっただけです。でも、強いグループの人たちに、めちゃくちゃ怒られてハブられましたね。その時から、自分が好きなことをやって誰かに怒られるという人生がスタートしていました(笑)怒られるというか、今は、反対されるとか指摘されるとか。学校で呼び出しをくらうとか。今は、当時よりも正義感がなくなったかな。昔も正義感というか嫌だったってことなんですけど…、今は、諦めの方が強いかも。続けていけば社会のためになるって信じているので、今は押し通せないけど、たとえば半年後にはみんなわかってくれるだろう、と。
演劇と自分との関係
中込
今は、演劇と自分とは、どういう関係ですか。
竹内
楽しくて演劇やってるという感覚はあんまりないんですよね。演劇以外やることがないし、演劇以外のことをやっていると演劇のことを考えてしまうので、演劇をやっているという感じです。演劇には拘束力があって、演劇側に手綱を握られている感じがしますね…、一度演劇から離れてみようと思ったことがあったんですが、無理でした。
演劇は、環境問題とか政治とか、自分の外にあるものと似ている感じがします。自分の外にあるけど考えざるを得ないもの。
中込
どうしてそういう思いに至るようになったのだろう?
竹内
高校生の時に演劇を始めて、「プロより面白い作品を作らなければ」という気持ちで創作に挑んでいました。演劇部は恵まれてる。上演場所がもう用意されていて、学校が守ってくれて。だからこそ、プロより面白くないといけないと思っていました。朝起きて演劇のことを考える、飯を食う時も、テストを受ける時も。そうなると、演劇のことを考えない生活がわからなくなる。でも、当時は、将来演劇を続けるなんてまったく思っていなかったです。
中込
将来の計画はさておき、目の前のことに集中していたっていうことかな。
竹内
演劇は人生の役に立つ、と確信はしていました。演劇を続けなくても、演劇のことを真剣に考えていることは、必ず人生の役に立つ。将来のことは度外視して無我夢中で演劇をやっていたとしても、有意義な体験になるだろうと思っていました。
中込
その思いは今も変わらない?
竹内
演劇はそういうものです。ただし、真剣にやれば。
中込
なにをもって「真剣」というのだろう?
竹内
演劇という活動を自分のためだけにしている、というのは、演劇のふりをして別のことをしているというふうに思います。かんたんな言葉で言ってしまうと、自己顕示欲を満たす、みたいな。
中込
そうだねえ…、自分はこの世で唯一の存在だから、ちゃんと愛した方がいい。だからこそ、そのために、演劇そのものを愛した方がいいと思う。
竹内
自分をちゃんと愛せていないと、演劇の時間に演劇ができないと思うんですよね。
中込
それは悩ましい命題…表現にはコンプレックスが付きまとう。
竹内
演劇は集団で創るものだから、一緒に創るメンバーがお互いをしっかり評価し合い、演劇を信じていることが大切だと思います。作品を発表し合う以前に、互いを肯定し合う。それで人間は成長していくのではないか…と思います。
中込
本当にそうだね。勉強になります!
「ぱちぱち」では、企画のディレクションに初挑戦!
中込
ぱちぱち立ち上げ時に、ミズキが『「ひとり」を味わうワークショップ』をオンライン開催しました。25歳以下のメンバーがディレクターを務めて、外部に開くコンテンツは初めてだったんだよね。今もまだぱちぱちは黎明期だけど、今よりも手探りな状態でやってくれた…、もう1年前なんだけど、覚えてるかな(笑)
竹内
覚えてます、覚えてます。最初は、自分で主催の公演をやる時に資金集めをしようとしていて、ぱちぱちに相談してみようかなというところだったんですが。それでそうであればワークショップをやってもらえないかということで、やるしかない!と(笑)公演の作品のテーマが「孤独」だったので、それにかかわるワークショップをやることにしました。
「孤独」というと難しそう、学術的な感じがするから、柔らかい言葉で「ひとり」にしました。特に、僕が豊岡市にいるのでオンラインでないとできないというのと、コロナ禍で、一人でいることにちょっと飽きてきた、どうやってひとりでいることをごまかそうか、という社会の風潮を感じていました。
ひとりであるということをコンテンツとして丁寧に味わう、よりポジティブに面白がれるということができたらいいなと。
中込
うんうん。また、芸術文化観光専門職大学の第一期生ということで、「芸術⽂化観光専⾨職⼤学ってどんなところ?」というトークも同時開催してくれたんだよね。それには、入学が決まっている高校三年生も参加してくれて。
竹内
はい、その方にはちゃんと大学で出会って、サークルで一緒に活動しています。
中込
おお、出会いが実った!嬉しいです。
「ジコショウカイ展」について
中込
2023年2月に八王子市学園都市センターで開催された「鳥公園のジコショウカイ展」のディレクターを、同じメンバーの森口夏希さんと一緒に、ミズキが担当しました。西尾佳織さん主宰の、劇団とは別の、演劇創作のためのコミュニティである「鳥公園」が、その活動を知ってもらうための広報イベントですね。興味はどこから来たのですか?
竹内
鳥公園に興味がありました。国際交流基金で作品の映像を配信していて、それが出会いで、面白いなあと思っていました。かつ、ぱちぱちの読書会で、西尾さん作の「『ヨブ呼んでるよ』を読む会」に参加して。
中込
準備はどうですか?大変?
竹内
自分が責任持って、ひとつのイベントブースを作るというのが初めてで。スタートして1カ月くらいは不慣れで、大変でした。自分にどんな決定権があるのかも気付きながら。主催のふれあい財団の荻山さんや、西尾さんとのディスカッションについていくのもやっとでした(笑)
中込
初めてのことは、見込みが立たないから大変だよね。
竹内
そうですね、一度体験してみないとわからない。ぱちぱちで初めて体験できてよかったです。
今後、演劇ネットワークぱちぱちでやってみたいこと
中込
これから演劇ネットワークぱちぱちでやってみたいことはありますか?
竹内
今、「映像演劇」に興味があってめちゃくちゃつくってるんですけど、自分の作品を東京で上演してみたいです。作品を自分でつくって、そのデータをぱちぱちに送って、発表してもらう。映像演劇の面白さは、作り手が発表会場にいなくてもできることだと思うんです。これまでの映像演劇は、チェルフィッチュ(劇作家・岡田利規主宰の劇団)がやってるものは、作り手が会場に必ずいるんですが、僕の規模であればいなくても大丈夫かと思うんです。
ぱちぱちは八王子が拠点で、僕は兵庫県豊岡市に住んでいるので、遠さを活かして、遠くからの便りという感じでぱちぱちの場が作られていくということができたら面白いと思うんです。
中込
えっ!ミズキ、現場に来ないの?作り手が来ないってアリなの?そんなことできるのだろうか。
竹内
うーん、現地に行ってもいいんですけど…、でも、映像演劇の可能性は、現地に作り手がいなくても発表できることなので。一般的な演劇は、上演日に脚本家や演出家がいなくてもできるじゃないですか。映像演劇の場合、出演者すらいなくても成り立つ。極端な話、誰もいなくても、お客さんが再生ボタンを押すだけで上演できる。それが演劇体験になるというところが魅力なので、そういう作品を作りたいんです。
中込
映像演劇…、まだまだ新しいジャンルだと思うから、想像がつかないからこそわくわくするね。八王子でぜひやってほしい!
将来の夢や目標
中込
将来、こういうふうになりたい、とか、夢や目標を聞かせてください。こんな人間になりたいとかでも。
竹内
あー、人間っていうことになると、S先生(当時、演劇部顧問の先生)みたいになりたいですね。
中込
あはは!これはS先生にもインタビューに登場してもらわないといけない…(笑)
竹内
すごい面白いじゃないですか、S先生。空気を読まずに核心を突く、というか。いつも楽しそう。社会的なことに対するビジョンや問題意識はあるけど、その一方でいつもとぼけてる、というか、とぼけてるかどうかもよくわからない(笑)
中込
そんなふうに考えたことなかったけど、わかる!(笑)
竹内
とにかく楽しそうなのがすごい、いいですよね。高校の時から、S先生のようなオジサンになりたいって思ってました。心の中にリトルS先生を住まわせてる。こんな時、S先生だったらどうするだろうって思って行動するとか。
中込
ああ、そういうことあるよね!すごい…S先生の人徳。あと、ミズキは教育にも関心があるんだよね。
竹内
教育というか、若い世代の育成を丁寧に考えたいです。職業として先生になりたいとは思わないんですけど、自分が受け継いだものを次の世代にどう引き継いでいくかが人生の中で重要な仕事のひとつだと思っているので、それを積極的にするのが教育活動であり、偉大なことだと、高校…中学、いや、小学生の時から思ってます。
中込
わあ、立派な志だなあ。勉強になります…!ミズキの将来が本当に楽しみだね。なにを巻き起こしていくんだろう…!
竹内ミズキさん、お話を聞かせてくれてありがとうございました!
次回の「ぱちぱちメンバーズファイル」は、今回のインタビューにも登場した森口夏希さんです。お楽しみに!
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