『ミズキとひさによる演劇創作方法について』
~100人でつくる2人芝居~

作品解説
演劇に夢中な学生時代を過ごしてきた竹内ミズキと箕浦妃紗は、10代の終わりに八王子で出会い「二人芝居をしよう」と約束しました。しかし、互いの進学や就職ですぐには叶わないことがわかり、5年後に上演すると決めました。
出会った八王子でその約束を果たします。
5年という長い約束が忘れられずにいたのは、たとえば2人が「学生」などの「立場」として出会ったのではなく、演劇を通して「人間」として出会ったからかもしれません。
私たちが社会生活を営むには常に職業や立場といった役割が求められます。一方、人間は生まれた時には役割を持ちません。
本作品では、竹内と箕浦がそれぞれの演劇について語る、あるいは、集まった方に語りかけるなどしてコミュニケーションを取ることで、「役割を持たない人間として出会い直す場」を作ります。
上演会場の第一中学校は竹内の母校です。上演場所として選んだ理由は、劇場が持つ「見る/見られる」のイメージを崩して、集まる人々がかつての同窓生のように自然にそこにいられる、心地よいサードプレイスのような場を作りたいという創作チームの思いがあるからです。
中込遊里(演劇ネットワークぱちぱち総合ディレクター・鮭スペアレ主宰・演出家)
竹内ミズキと箕浦妃紗について

竹内ミズキ(出演/劇作家・演出家・駄菓子屋/演劇ネットワークぱちぱち)
2000年生まれ。9歳から18歳までを八王子市で過ごす。現在は兵庫県豊岡市日高町江原を拠点に活動する劇作家・演出家・駄菓子屋オーナー。私と演劇のためのソロ活動〈水紀〉や、クローズドなオープンチャット〈毒疫〉、アーティストの創作に立ち会う〈助産〉、人の人生に土足で踏み込む〈厄介〉という活動をしている。髪型はスキンヘッド。大嵩飛行機所属。人間じゃないかもしれない。。
箕浦妃紗(出演/表現者/演劇ネットワークぱちぱち)
2000年、愛知県名古屋市生まれ。高校から演劇を始める。桜美林大学 芸術文化学群 演劇・ダンス専修卒。大学卒業後、北茨城市地域おこし協力隊に着任し、芸術によるまちづくり推進を図る。現在、フリーの表現者として各地で作品作りを行なっている。2025年6月より、福島県いわき市に移住し、いわき市民の仲間達と、引き続き表現活動を行なっていく。
作品内容
『ミズキとひさによる演劇創作方法について』
プログラム
| 時間 | 内容 |
| 0分 | オープニング(主催者からのご挨拶)【箕浦妃紗】 |
| 5分 | 『“第三の居場所”の実現可能性』【講演者:竹内ミズキ】 講演者は、生まれ育った八王子を5年前に離れ、兵庫県豊岡市で大学に通いながら芸術活動を行ってきた。 今年の3月に大学を卒業し、翌月趣味で駄菓子屋を開く。 豊岡のような地域には、公園や、マクドナルドのような飲食チェーン店が少なく、子どもたちのたまり場が不足している。 これは例えば、夜中に両親と衝突して家を飛び出してきた子どもに、朝まで安全に時間を過ごせる「避難所」がないことを意味する。 本講演では、このような課題に対する豊岡での取り組みを報告し、現代人にとっての、家庭とも学校や職場とも異なる別の「居場所」のありかたについて、参加者と共に考察する機会としたい。 |
| 50分 | 休憩 |
| 60分 | フリーディスカッション【座長:箕浦妃紗】 |
| 105分 | クロージング |
| 120分 | 終演 |
日時
2025年
11月23日(日) 15時30分
11月24日(月・祝)10時30分/15時30分
※上演時間2時間予定。(途中休憩10分)
※開場は開演の30分前
会場
八王子市立第一中学校
(〒192-0032 東京都八王子市石川町2957-1)
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ご予約
◆入場料
無料(要申込)
◆申込み期間
10/19(日)13:00から公演前日 23:59 まで
※各ステージ定員に達した時点で締め切ります。
◆インターネット予約
→申込フォーム
◆電話予約
(公財)八王子市学園都市文化ふれあい財団
042-621-3005(9:00~17:00)
公演関係者の意気込み・メッセージ
演劇ネットワークぱちぱち総合ディレクター・中込遊里より

『ミズキとひさによる演劇創作方法について』への想いが私はたくさんある。ありすぎる。自然に書くと何文字になるかわからない。なのでできるかぎり要点を箇条書きにしてみる。
- 本作品は「人との出会い」で作られる。人と出会うことは当たり前のようでいて尊い。なので尊い時間になると思う。
- 本作品は5年前の竹内ミズキと箕浦妃紗の約束から始まった。特に若者にとっては5年間はとても長い。その約束がすたれずに、本当に公演の日が来た。すごいことだ。
- 実際、5年よりも長い。本作品は、企画制作の「演劇ネットワークぱちぱち」の前段の「八王子学生演劇祭」から始まった。そこで竹内ミズキと箕浦妃紗が出会ったからだ。中込が八王子の若者と演劇を作った7年間に記念碑を残すとするならば、本作品である。
- 演出の森口夏希(もりもり)とも「八王子学生演劇祭」で出会った。まだ高校生だった。そこから7年間、ずっと一緒に創作している。演劇ネットワークぱちぱちの企画参加率no.1だ。出会った頃と今では明らかに人間としても演劇をする者としてもパワーアップしている。演出という、視野を広く持つ役割をもりもりが担う日が来ることに感動を覚える。
- 広報の関口真生(まおすけ)と伊藤優花(ゆうか)との出会いも「八王子学生演劇祭」だった。もう彼らは立派な社会人だ。二人とも本作品の準備から長年付き合ってきた。私は彼らと一緒に作品の記録を残す。
- 構成と脚本の佐藤卓弥(たくや)との出会いは高校演劇部。脚本・演出をしていた。驚くばかりに才能が溢れる人だった。高校を卒業してから数学の道に進んだ。また演劇をしてほしかった。演劇部の同期であるミズキを受け止める器のあるのはたくやだと思った。OKをもらえた時は本当に嬉しかった。7年ぶりにたくやの演劇が見られる。
- チームを支える菅智明(ちあき)と伊藤明寿美(あすみ)も卓弥とミズキの高校演劇部の同期。賢く優秀なのはもちろんのこと、二人とも、一緒にいると心が温まる。そういう力を持っている。
- 會田梨乃(りの)が本作品の核を作った。りのはミズキと妃紗の5年間のことをあまり知らない。だからこその客観性で、「やむを得ない社会への帰属に翻弄されても、きっと『あなた』だから共に在りたい。」という作品の核となる言葉をチームに授けた。
- 公演場所は竹内ミズキの母校。居心地の良い場所を作るために体育館や多目的ホールなどの広い場所ではなく普通教室をお借りする。
- 居心地の良い雰囲気作りのため、お菓子とかお茶も用意する予定。ミズキやひさは、それぞれ今住んでいる豊岡市(兵庫県)といわき市(福島県)からお土産を持ってきてくれる。集まったみんなでいただこう。こういうのも演劇的な時間。素敵。
- 脚本などに活かすために、ミズキとひさが25年の人生で出会って影響を受けた方たちに、アンケートを送って回答していただいた。創作チームは知らない二人のエピソードを教えていただけるだろうと期待していたのだが、私は回答を読んで、想像以上に感動した。特に、「ミズキ/ひさに今だから言えることはありますか」の回答が、泣けた。人は、人と出会って経験を積んで年齢を重ねていくという当たり前のことが、輝いて見えた。
脚本・佐藤卓弥より

脚本を担当している佐藤卓弥です。
本作の構成を考えるにあたって、私はアントン・チェーホフ作『煙草の害について』に着想を得ました。
本作は、箕浦妃紗が主催した講演会の登壇者である竹内ミズキが教室の黒板の前に立ち、観客に対して講演を行うという構造をとっています。
本作において観客は、演劇の観客であると同時に、講演会の観客という劇中の登場人物を兼ねています。
講演会型にすることによって、舞台と客席が別の世界として分かれているのではなく客席も上演されている劇の世界の一部になっているという構造の演劇をつくります。それによって、舞台と客席の境界が限りなく曖昧になり、役者と観客という壁を超えて、会場に居合わせた人たちが相互作用し合ってその場をつくっている、そんな作品ができることを望んでいます。
それと同時に、この演劇は確かに台本の用意されたフィクションであるが、それでも登場する人物たちのコミュニケーションは目の前で形作られながら現実に起きているということの実感を、その場に居合わせるお客様に届けられたら嬉しく思います。
<プロフィール>
2000年生まれ。日野市で育つ。現在、東京大学大学院(博士課程)に在籍、数学を研究中。高校入学時、演劇部の新歓公演に感動して、これまで興味を持たなかった演劇部に入部。脚本・演出・出演を務める。
演出・森口夏希より

こんにちは。演出の森口夏希(もりもり)です。
『ミズキとひさによる演劇創作方法について』にはフリーディスカッション(集まったみんなで話す)の場があります。
私は話す事も聞く事も苦手です。私のような方も多いと思います。なので、フリーディスカッションに抵抗があるあなたにもよかったら見に来てほしいなと思ってこれを書いています。
フリーディスカッションでは話すことを強制するつもりはありません。相手の言葉を受けて、話したいことが生まれた場合に、発言してもらえたら嬉しいです。特別なことを話す必要はありません。あなたが人に話せること、相手の話を聞いて、出てくる言葉に価値があると思います。
この企画が生まれてからの約5年間、ミズキさんとひささんはオンラインミーティングをちょくちょく行っていました。私はそれを覗いていました。知り合ったばかりで2人に興味があったからです。2人はほとんどお互いの近況報告をして、時々悩み相談をしていました。私は黙って聞いていました。
本格的に企画が進み始めると皆から「もりもりは2人のことをよくわかっているはず」と何度も言ってもらいました。
けれど、2、3ヶ月に一度のzoomの内容は覚えているのは難しいし、2人のこともごく一部分しか知ることができませんでした。企画の準備が進んでいる今でもそうです。意見交換が上手く出来た!と思ったら、直近のミーティングではほとんど自分の意見を言わないまま終わることもありました。伝えないと、と逸る気持ち、上手く説明できない不甲斐なさ、自分の意見を言う緊張、他者について考える億劫さ、言葉にしても伝わらないという先入観。私は不貞腐れることもあり、ミーティングが終わって冷静になってから、あまりにも自分が自分すぎることに笑い転げました。
フリーディスカッションの場は対立したり、誰かが誰かを評価する場にするつもりはありません。
私も、ファシリテートを務めるひささんも自信があるわけではありません。でも、この作品だからこそ、形だけではない本当のコミュニケーションができると思います。企画の準備の初期からこのことを目指していました。
その場に集う人がその場に身を委ね、素直に応答することのできる空間。言葉でなくとも頷きといった合図や表情を交わせること。他者を信頼し、自らを受け入れる。『竹内ミズキと箕浦妃紗による演劇創作方法について』は、そういう時間にしたいです。
<プロフィール>
2003年、八王子市生まれ。中央大学4年。どぐうアーティスト。3歳から水泳を学び、高校では水球部と演劇部を掛け持ちしていた。演技や美術のデザインなど様々なジャンルの表現を横断している。
演出助手・伊藤明寿美より

演出助手として参加させていただきました、伊藤明寿美です。
今回の2人芝居の中心となる、竹内ミズキさん、箕浦妃紗さんとは、2019年の「八王子学生演劇祭」で、一緒に演劇を創作しました。
その時からしばらく経ち、今回の2人芝居企画で再度関わらせていただけること、大変嬉しく思っております。
生活を営む中で、5年前に起きた出来事なんて、忘れていることの方が多いと思います。
そんな中、5年前に言葉だけで交わされた約束が残り続けて、形になろうとしているのは、なかなか見ることの出来ない貴重な機会だと感じています。
約束が形になり、また、ミズキさん、妃紗さん、お二人の間だけではなく、観劇いただくお客様や企画に参加した私たち含め、第三者の目の前に現れようとしているというのも、今回の企画のとても素敵なところです。
お二人のことを知っている方はもちろん、知らない方にも、客席と舞台の境界が曖昧な場所で、限りなくお二人に近い場所で、その再会に参加していただけたらいいなと思います。
<プロフィール>
2000年生まれ。竹内、佐藤、菅と同じ高校の演劇部では部長を務め、中央大学第二演劇研究会で出演・照明などを務める。現在、八王子市にある会社に勤めている。
クレジット
出演 :竹内ミズキ 箕浦妃紗
構成・脚本 :佐藤卓弥
演出 :森口夏希
演出助手 :菅智明 伊藤明寿美
演出補佐・構成補佐:酒井一途
広報 :伊藤優花 関口真生
プロデューサー :會田梨乃 荻山恭規
企画制作:演劇ネットワークぱちぱち
運営 :一般社団法人AsoVo
主催 :(公財)八王子市学園都市文化ふれあい財団
お問い合わせ
(公財)八王子市学園都市文化ふれあい財団
TEL:042-621-3005(9:00~17:00)
八王子芸術祭 WEBページ
https://hachioji-arts-journey.com/
演劇ネットワークぱちぱちとは
18~25歳の世代が「演劇とのより良い付き合い方」を考えたり試したりするための「仲間」「知識」「場所」と出会えるプラットフォームです。
劇団とも学校とも違う、演劇を通したゆるやかな繋がりの場です。たくさんの取り組みを行い、それがどうなったのかを発信していきます。

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