【豊岡演劇祭ツアーレポート】豊岡演劇祭2022、旅の記録(前編)

豊岡演劇祭2022、旅の記録(前編)

プロローグ

 私「今度の週末、豊岡行くよ」
家族「へえ、豊岡ってどこ?」
 私「えー、名古屋とか?」


……兵庫でした。



という会話をしたのが出発予定日の3日前。この時私はまだ往路の乗車券を買っておらず、それどころか新幹線で行くのか高速バスで行くのか、いや、そもそも豊岡が日本のどこにあるのかさえ、分かっていなかったのである。


今回私たちに課せられたミッションは、豊岡演劇祭に行って早坂彩さんが演出する演劇作品『新ハムレット』を観劇してくること。そしてそれに付随したレポート(全体のテーマは「豊岡演劇祭を観てきて、自分がわくわくしたこと」)を書くことだ。今回このツアーに参加したぱちぱちのメンバーは、まおすけと内田くん、そして運営側のゆうかさんと私まゆたその計4人。といっても4人全員で行ったのではなく、現地集合現地解散。「『新ハムレット』を必ず観劇する」というミッション以外は各々自由にスケジュールを組んで良いということで、もはやこれは一人旅です。まおすけに至っては日程がずれていたので、現地では会えなかった。


「豊岡演劇祭」というのだから、てっきり「豊岡」という場所だけで完結する演劇祭なのかと思っていたら全然そんなことはなく、城崎、出石(いずし)(読めない)、但馬、江原など、調べてみると9つもエリアがあり、それぞれ最寄り駅があるのかと思いきやそれも違って、『新ハムレット』を上演する永楽館に行くにはバスに乗るしかない。しかも本数がとても少ない。場合によっては1時間に1本であるらしい。見たい作品を観つつ、お昼などの休憩を確保しつつ(兵庫といえば明石焼き!現地のグルメがあるならば絶対に堪能しなければならぬ。これはマストである)、移動しつつ、これら全てを電車やバスの時刻表と照らし合わせながらまとめて、スケジュールを組み立てるなんて私にできるのか?いや、無理です。


と早々に諦めた私は、色々考えた揚げ句、最終的にゆうかさんのスケジュールに合わせる形で落ち着いたのでありました。



【事前に考えていた観劇スケジュール】

9/18(日)

10:14 江原に到着(高速バス)
11:30 ルサンチカ『GOOD WAR』観劇(チケット:購入済み)
13:00 終演

その後、江原のお店でお昼を食べる。(ハンバーガーが安くて美味しそう)

14:30ごろ? 電車に乗って豊岡駅まで行く。そして芸術文化観光専門職大学を見てみる

その後、フリータイム(観光など)

17:00ごろ? 出石に行って夕飯を食べる。(永楽館周辺にお店が沢山あるっぽい)
19:00 早坂彩『新ハムレット』観劇(チケット:当日券)
20:30 終演 臨時バスに乗って豊岡まで戻る。


その後、翌日の朝ご飯を買う。


22:00ごろ? みずき君のシェアハウスに到着




9/19(月)

午前中 起床、自由解散
13:00 ヌトミック『ぼんやりブルース2022』観劇(チケット:台風の状況を見て取る)


その後、大阪でたこ焼きかお好み焼きを食べてできるだけ観光して帰る。


台風が近付いているという情報は知っていたので、2日目に関してはザックリとした動きのみ決めて、その時の状況に合わせて動くということに。

ルサンチカ『GOOD WAR』(会場:日高文化体育館、エリア:江原)

江原駅。誰もいなかった…。

  



東京から高速バスに乗って8時間、定刻通りに梅田に到着し、そこから全但バスに乗り換え3時間。計11時間バスに揺られて江原河畔劇場のバス停に到着した私は、さぞかし残念な顔をしていたに違いない。知らない土地への旅ということで、バスに乗る前はワクワクに満ちあふれていたというのに、狭いシートに座りながら知らない人の真隣で熟睡するということがどうしてもできなかった。車内が寒かったというのもある。次回、観劇のために地方に遠征する時は高くても絶対に新幹線で行こうと心に誓った。


9月なのに気温は30℃。私とゆうかさんは(同じバスに乗っていた)Googleマップを頼りに会場までの道を歩き始めたのだが、途中近道をしようとしたら高校の敷地に入ってしまい逆に遠回りに。顔も体もとにかく汗だくで、この時点で結構心が折れそうでした。寝不足は本当にイカンですね。ゆうかさんが一緒にいてくれて本当に良かったです。

日高文化体育館。でも入り口に幟が1つと立て看板があるのみでした。

  

そうしてなんとか体育館に到着したものの、入り口には「豊岡演劇祭」と書かれた赤い幟とポスターが貼られた立て看板があるのみ。『これ本当に会場で合ってる?』と2人で首をかしげるも、薄暗いロビーに(昼間だったからなのか、なぜか電気がついていなかった)何人か人が座っていたので、多分恐らくきっとそうだろうと信じ、開場時間を待つこと数分、無事に体育館の扉が開き『ルサンチカ開場しま〜す』の声が。ああ良かったとホッと一息。受付を終えてパイプ椅子に座る。演劇祭のロゴが書かれたTシャツを来てる人がいたので、「そのTシャツってどこで売ってるんですか?」と聞いたところ、豊岡駅のところに演劇祭の本部のような場所があり、そこで売っていたとのことだった。白地に赤のデザインが可愛くて、ちょっと欲しくなった。


体育館は常設の観客席や(2階席まであった)舞台まである立派なもので、きっとここではバスケットボールの試合もできるし、大勢の人を集めて音楽ライブもできるのだろうなと思った。しかし常設の舞台に背を向けて観客席と向かい合わせになる形でパイプ椅子が置かれており、あくまでもコートの中や観客席をステージとする作品だった。


作品は沖縄戦のアメリカ兵が投降を促すセリフから始まり、(「対話することができた者たちは助かり、対話を拒んだ者たちは命を落とした」という当日パンフレットの言葉が印象的だった)断片的に誰かの記憶が発語されていく。観劇前にルサンチカのホームページで作品の元になったインタビューを軽く読んでいたので、バラバラなセリフは1つ1つが誰かの体験であり、誰かの言葉なのだなと分かった。そして作品が始まってすぐに、これは物語の筋を追うような作品ではなく、沢山の不特定多数の人たちの言葉を聞く作品なのだなと思い、「このセリフにはどんな意味があるのだろう?」と考えることをやめた。


ドラムや音楽を効果的に使いつつ、インタビュイーの話し言葉をそのまま使ったであろうセリフたちは、様々な「あの日」を語り、沖縄戦やウクライナの戦争のような規模の大きいものから、日常に起こる小さい諍い(戦争)までごちゃまぜにする。途中からセリフはただの音になって、町の中で聞く喧騒のように意味が分からなくなった。でももしかしたら私が必死に睡魔と戦っていたせいかもしれない。もっと頭がクリアだったら、そこにある法則や立ち位置の意味が分ったかもしれないけれど、私には意味を見いだすことはできなかった。演劇というより、身体を使った言葉の展示会のような作品であったように思う。


「演劇祭」というのだからもっとワイワイしているかと思っていたのに、全然そんなことはなく、逆に「本当に会場はここで合っているのかしら?」と不安になるくらいの簡素っぷり。もしかしたら全然盛り上がっていないのかもしれない。大丈夫かしらこの演劇祭、と最初からちょっと不安になった。


安くて美味しいとネットに書いてあったバーガーシティにてお昼ごはん。照焼きチキンバーガーもポテトもすごく美味しかった。でも私がローカルフードを食べられたのはこれが最初で最後であった……。


フリータイム、豊岡駅周辺にて

手動ボタン式の電車。そうか日本海側だから雪とか降るんだろうな…。



お昼ご飯を食べたのちにゆうかさんと一旦別れ、予定通り豊岡駅へ行くことに。“豊岡”演劇祭というくらいだから、豊岡駅は演劇祭で盛り上がっているはず!と期待して駅に降り立つと、革製品のバッグたちがお出迎え。名産地なんですって。しかし赤い幟など、演劇祭らしい装飾は見当たりません。あれ?演劇祭はどこですか?

人がおらず、ガランとした駅周辺。

 

駅から出ると広いロータリーに出た。ここにも幟などは無い。てっきり駅のすぐ近くに本部っぽいものがあると思ったのに、無い。とりあえずやる事もないので予定通り専門職大学の方へ行ってみることにした。もしかしたら本部があるかもしれないし。と、歩くこと約15分。

うわーーーー!!


 

なんか素敵な立派な真新しい建物が見えてきましたよ!

 

これはすごい!残念ながら劇場内は見ることはできませんでしたが、きっと大きいんだろうなと外観からも容易に想像できそうでした。これは演劇祭の本部もありそうな予感!と思いきや、警備員さんに聞くと残念ながらここは本部ではないそうで。そして演劇祭の本部がどこにあるのかも分からないとのことでした。そりゃそうだ。

校舎の隣には学生寮が、裏山には神社がありました!

 



折角だからと近くにあった日吉神社にお参りをし、もと来た道を引き返して駅前まで戻るとめっちゃ疲れた。うろうろしていたら携帯の充電が無くなってきたので、休憩がてら駅前にあった「Aity」というショッピングモールへ入ることに。

たまたまゲームコーナーに入ると、なぜか太鼓の達人がコインが入れられた状態で放置されており、周りに誰もいないのでスルーするのもアレだしなぁ…と、なぜか3曲遊んだ。楽しかったが謎の時間だった。どなたか知りませんがありがとうございました。

ショッピングモールから出ると商店街になっていたので歩いてみると、ようやくそれっぽいお店を発見!


 



これだーーー!!

演劇祭のオリジナルTシャツを買うかどうか最後まで悩んだのですが、結局同じロゴのオリジナル手ぬぐいを1つ買っただけで本部を後にしました。(後半へ続く)

この記事を書いた人

まゆたそ
ぱちぱちのマネージャー。運営側のひとり。典型的な夜型人間で、このレポートも深夜に書き上げた。締切を破りがち。好きなことは寝ることと食べること。