
2025年3月20日(木・祝)、市民が参加する短編戯曲ゼミの公開リーディングが行われました。5か月間のゼミを通して参加者の書いた戯曲を、プロの俳優が読んでくれるイベントです。
戯曲の執筆は「八王子のまちあるき」から始まりました。未確認生物が住む団地でのお話、何気ない風景の中で繰り広げられるちょっと変な会話、車がおしゃべりする物語など、個性豊かな作品が14本発表されました!
「戯曲ってなに?」「戯曲を書く/読むってどんな感じ?」そんなわくわくと楽しさの詰まったリーディング発表会のようすをレポートします。
あなたも、戯曲の世界をのぞいてみませんか?
▼イベントについて
「短編戯曲を書くための小さなゼミ in 八王子 ~屋根裏ハイツのシナリオ教室~」
日時:2025年 03月20日(木)13:00開演(12:30開場)19:30終演予定
場所:八王子市学園都市センター第1・第2ギャラリーホール
◎詳細はこちら↓

読んでくださる方々はこちら!みなさん小劇場を中心に活躍しているプロの俳優・演出家・作家の方々です。
狩野瑞樹(三転倒立/ザジ・ズー)
坂本彩音
島村和秀(Oxymoron Theatre Club)
瀬川鮎(劇団ダダ)
瀧口さくら(avenir’e)
福原冠(範宙遊泳/さんぴん)
兵藤公美(青年団)
升味加耀(果てとチーク)
中村大地、村岡佳奈、渡邉時生(屋根裏ハイツ)
この発表会では、俳優同士の打ち合わせやリハーサルはなしのぶっつけ本番。その場でうまれたものを大切に味わいます。

いよいよ、俳優のみなさんによって、戯曲に息が吹き込まれます。
まず、打ち合わせ無しで読まれているとは思えないようなグルーブを感じさせる俳優のみなさんの対応力に脱帽。
一方で、俳優のみなさんもほぼ初見で読むため、戯曲の世界で巻き起こる予想外の展開に思わず驚いたり笑ったり、作り込んでいないリアクションが出たりと、この場限りの良さを感じられる場面も多く、素敵な瞬間がたくさんありました。
たとえば、村尾博美さんの戯曲『鹿の恩返し』のリーディングでの出来事。この戯曲は、「市役所職員がその昔助けた鹿が、恩を返すためやってくる」という鶴の恩返しを下敷きにした戯曲です。クライマックスのシーンでは、ある驚きの展開になり、読んでいた俳優さんたちが笑いをこらえられず、読み進められない事態に。その様子を見て、客席も大いに盛り上がりました。

来場者の方々は、演じている俳優を終始見ている人もいれば、戯曲のデータの文字を目で追いながら聴いている人もいました。それぞれの方法で想像力を働かせて、戯曲の世界を味わいます。
リーディング発表会直前のインタビュー(https://hachiojibunka.or.jp/play/net88/event/8812)では、ゼミ受講生の森口さんが自分の戯曲『未確認団地』について「ドクさんという未確認生物と森田朋美という中華料理店の娘が登場し、朋美がドクさんに結婚を申し込む話」と話していました。発表会ではさらに作品が進化していて、それぞれの抱える問題や切なさがぐっと浮かび上がる構造となっており、すっかり惹きこまれてしまいました!

また、この発表会では、「ト書き」(台詞ではなく、場所の設定や登場人物の動作を説明した文章)も読み上げられます。今回、たくさんの作品を読み比べることによって、ト書きにこそ台詞と同じくらい個性が宿っていることが感じられました。普通の上演では読み上げられることはないト書きの存在を意識できるのも、「戯曲」を味わうリーディング発表会ならではのおもしろさだなと思いました。
来場者からは上演が困難そうなト書きや設定の存在について、それをこの戯曲ゼミではどのように考えるのか?という問いかけがありましたが、出演者の福原冠さんは「(舞台化することが決まっている脚本の場合は、)本当にト書きに書かれた通りの演出が可能なのか不安になってしまうこともあるかもしれないけれど、そういうしがらみから解き放たれて書かれているように思った。自由なト書きからは『俺の想像力は誰にも止めさせないぞ』という気迫を感じる。その自由さを持ち続けてほしい」と言っていて、会場にいる人たちも深く納得している様子でした。

すべての戯曲を読み終えたあとは、ゼミの受講生と出演者による振り返りが行われました。
ここでは、受講生から口々に「自分が書いたものが読まれて嬉しかった」「戯曲とは、声に出して読まれて初めて完成するものだと思った」という声が挙がりました。
受講生の奥山樹生さんは、「自分が書いたものに対して試行錯誤して読んでもらうと、寄り添ってもらっているように感じました。書いているときの孤独感と読んでもらったことの充足感は、だいじな思い出として収めておきたい気持ちです」とコメント。
ゼミの講師の中村大地さんは、「今回みなさんが書いた戯曲は上演してもいいし、また書き足したくなったら書き足してもいい。あるいは、今回の戯曲ゼミのような場を、自分たちで作ることもできる。その時はゼミの形式をそのまま活用してくれていいし、こういう場が増えていったら僕もうれしい」と話し、和やかな雰囲気で幕を閉じました。
戯曲を書くことの自由さと楽しさ、やりがいは誰にでも開かれていると感じることができたこのリーディング発表会。私も難しく考えすぎず、仲間と話し合い、深め合いながら作品を1本書くという機会をつくってみたいと思いました!いま、ぱちぱちでは不定期に「戯曲研究会」を開催しているので、そこでこのゼミの形式を試してみることもできるかも!と想像してわくわくしています。
戯曲執筆の旅は続く!~八王子市民×アーティスト「Hachioji Arts Journey」
2023年から、八王子市民とアーティストとが交流しながら、共に地域の魅力や価値を創り上げる10年の旅、「Hachioji Arts Journey」がスタートしています。
この戯曲ゼミもこの旅の一環として、2024年度の5か月間を歩ききりました。
2025年度は、また少し違う角度から演劇の魅力を知ってもらうための企画を準備中とのこと。
続報をお楽しみに!
(取材・文:演劇ネットワークぱちぱち 伊藤優花)
関連記事
戯曲ゼミ開催前の中村大地さんのインタビューはこちら!
リーディング発表会直前の受講生へのインタビューはこちら!
演劇ネットワークぱちぱちのミッションは、<八王子から発信する、あなたが演劇とのより良い付き合い方を見つけるための環境作り>です。
そのために、18歳~25歳という社会に飛び出したばかりの世代が、「自分らしい演劇の続け方」を考えたり試したりするための「仲間」「知識」「場所」と出会えるプラットフォームを作りました。劇団とも学校とも違う、演劇を通したゆるやかな繋がりの場です。たくさんの取り組みを行い、それがどうなったのかを発信していきます。
ぱちぱちでは、常時新メンバーを募集しています!
ぱちぱちに参加したいという方はもちろん、まだ考え中だけど話だけ聞きたいなど、少しでも興味を持ってくださった方は下のリンクをチェックしてみてください!